徒然なるままに

野球やラグビーについて書き残していきます

アイルランド戦

''静岡の衝撃''

 

そう2019年9月28日、静岡・エコパスタジアムにて日本がアイルランドを19-12で下したあの一戦である。

 

あれから1年9ヶ月ぶりに敵地ダブリンで再び相見えることとなった。

 

今回は珍しくもアイルランドが日本にリベンジを挑む形となり、B&Iライオンズに召集されたLOイアン・ヘンダーソンやSHコナー・マレー、CTBロビー・ヘンショーなど主力を欠くもののアイルランド代表のメンバー全員雪辱を果たすため燃えていたに違いない。

 

一方、日本代表は※NO.8に姫野和樹、ウィングにセミシ・マシレワ、スクラムハーフに齋藤直人がスタメンに名を連ね、松島幸太郎がフルバックに回る布陣を取った。(※試合直前に姫野が右膝の負傷によりテビタ・タタフがスタメン、アマナキ・レレイマフィがリザーブに入った)

 

前半3分、ラインアウトアイルランドが反則すると日本はPG(ペナルティゴール)を決め、幸先良く3点を先制する。(I 0-3 J)

 

先制されたアイルランドも黙ってはいない。前半6分、日本の反則から22m陣内に入り、ラインアウトモールからボールを展開し力強い縦への突破でトライをもぎ取り逆転に成功する。ディフェンスのスペースをランでつく、SH(スクラムハーフ)ギブソンパークの嗅覚も光った。(I 7-3 J)

 

トライ後のキックオフでアイルランドが反則取られる。タッチキックで敵陣に入った後、日本はラインアウトからモールを組み、そのまま押し込んでリーチがトライをあげる。この瞬間私は「この試合は点の取り合いになる」と感じた。

 

その後アイルランドに1トライ返されるも、前半34分ラインアウトにてLO(ロック)ムーアが相手ボールのスティールに成功する。それからフェーズを重ね、田村のキックパスからフィフィタ、フィフィタの後ろをサポートしていたラファエレにボールが繋がりトライ。再び逆転に成功した。ここ2試合でのムーアの頼もしさがいつにも増して際立っていた。(I 12-19 J)

 

このままリードして折り返したい日本は前半終了間際の38分相手のノックオンで自陣22m陣内にてボールの確保に成功する。セオリーに則ればここからショートパスでボールをキープし続けるか、キックで陣地を回復し時間を稼ぐのだが、日本は攻めの姿勢を崩さずワイドにボールを展開した。

 

結果として松島のロングパスがタッチを割り、相手ボールとなりトライを許し、リードされて前半を折り返すこととなった。結果論ではあるが、この場面はボールを展開するのではなく、キックで陣地を取る方がよかったのではないかと私は感じた。(I 19-17 J)

 

 

ライオンズ戦とは打って変わったシーソーゲームは後半開始直後に動き出す。

後半42分、ラックから田村がボールを持ち出し、ブラインドのスペースをランでついた。その後キックパスがフィフィタに繋がりトライ。すぐ様逆転することができた。(I 19-24 J)

 

ラックから自分でボールを持ち出すピック&ゴーを選択したことは、相手の意表を突く良い選択であったがそれだけで終わらず味方にキックパスを通してトライに繋げる。何故田村優が日本代表の司令塔であり続けるか、このプレーだけで説明がつくだろう。

 

この勢いでアイルランドを突き放したい日本であったが、前半からのハードワークの疲れがここから少しずつ顔を覗かせていたように見えた。

 

後半46分、齋藤の相手ディフェンスのスペースをついたキックが直接タッチを割り相手ボールとなる。さらにラインアウトモールで前に押し込まれ、焦りからモールからの展開後、日本は反則を取られる。

 

その後再びラインアウトモールからの日本のディフェンスセットの遅れをギブソンパークが見逃さずにブレイクを許し、FL(フランカー)ファンデルフリアーがトライ。シーソーの上下がまたしても入れ替わった。(I 26-24 J)

 

それから更に1トライを許し、劣勢に立たされた日本代表であったがここで終わらなかった。後半56分、代表初先発のマシレワの武器の1つであるオフロードパスから途中出場のマフィ→フィフィタ→齋藤とボールを素早く繋ぎトライを返す。2点差に詰め寄った。(I 33-31 J)

 

相手を射程圏内に捉えたと思われたが、ここから日本は立て続けに反則を取られ、2つのPGで1トライ1ゴールでも追いつけない8点差までリードを広げられてしまう。(I 39-31 J)

 

なんとかトライを奪いたい日本であったが、この試合通して課題であった規律、松島の負傷退場やフォワードの疲労も相まって相手ディフェンスをこじ開けることができずに試合終了。アイルランドにリベンジを許す結果となった。

 

アタックは通用していたが、13つと多すぎる反則やディフェンスの脆さによって相手に余計な失点を与えてしまった。収穫・課題共に多く見つかった試合であった。シックスネーションズ・オータムネーションカップを経験したアイルランドに比べて日本の準備期間が短いことは自明である。それでも相手が主力8人を欠いていたことを鑑みると日本は勝たなければならなかったと私は考えている。

 

これから2年後のフランス大会に向けて心配なところは、バックス特にウィング・フルバックの層の薄さである。贅沢ではあるが、ポジショニング、タックル、ハイボールキャッチを問題なくこなし、狭いスペースを抜き去るスピードあるいは相手を弾き飛ばせる強靭なフィジカルを持った選手が今の日本代表には多くいない。若手の成長・台頭が無いとフランス大会のプール戦通過は難しいのではないか。

 

 

と少し厳しめの口調となったが、齋藤直人の速く正確なパス捌き、タタフの力強いキャリー、マシレワのキレのあるステップとパスなど海外の選手相手に自分の強みを出せた選手もたくさん見ることができたし、何より代表戦を見ている時の熱い気持ちを久しぶりに味わうことができた。

 

これから11月20日スコットランド戦まで期間は空くがまた日本代表の試合を楽しみに待っておこう。最後までお読みいただきありがとうございました。